活動

第115回学習会(平成28年5月26日)

JR九州のまちづくり
話題提供:中村 勇 氏 (九州旅客鉄道株式会社 事業開発本部開発部大規模開発プロジェクト 担当部長)

 

  4月14日、16日に熊本・大分を中心に起こった熊本地震の影響で、4月に予定していた「ライプチッヒの都市計画と公共交通のデザイン」の学習会は残念ながら中止となった。震源に近い益城町や西原村、南阿蘇村などでは復旧のめどが立たないところもあり、未だ避難者も数多くいる状況。一方、熊本市内を見ると各地で復旧作業が急ピッチに進められ、ライフラインやインフラは概ね回復しつつある。今回、講演いただく中村勇氏は九州旅客鉄道株式会社の大規模開発プロジェクトの担当部長で、最初に地震による被害と復旧の報告をしていただき、後半は0番線跡地の活用など今後の熊本駅の開発についてお話しいただいた。

1.地震によるJRの被害と現状
 テレビなどでも多く報道された新幹線の脱線について、復旧においては通常地面からクレーンで吊るして車両を戻す手順であるが、下に川が流れていた兼ね合いもあり、人力によるジャッキアップで対応したため通常より時間がかかった。震災後の乗降客数について、熊本はボランティアなどの利用があり昨年比は増加、鹿児島は6、7割程度にとどまっている状況。

2.九州内での熊本の位置づけ
 熊本駅は乗降客数で見ると、新幹線開業によって21,000人/日が27,000人/日へと増え、内17,000人が新幹線利用客である。この数字は駅単独では九州内で7番目程度ではあるが、上熊本や新水前寺も含めた近接するネットワークで考えるとポテンシャルのあるエリアだといえる。

3.熊本駅の開発と今後の展望
 ここでは会場からの質問とも絡めてまとめる。0番線跡地の活用では、マンションの計画もしており、分譲、賃貸、シルバー向けを検討中。駅周辺の利用には鉄道を使って来てほしい願望はあるが、自動車利用の需要は多く、現在800台の駐車台数を2,800台に増やす計画をしている。このうちパークアンドライドの利用を500台程度見込んでいる。熊本駅とまちとの関係について、0番線跡地が南側への開発であり、中心部のある北側の開発に対しては、高架下に約2,000㎡の土地があり、ここを何かチャレンジングな場所にしていけると面白いのではないかと考えている。これまで県・市で進めてきた熊本駅周辺整備は広々とはなったが、その分人の密度が少なくなった印象もあるので、人の集まる場所にしていきたいと考えている。九州全体は50~100万都市がバランス良く配置しており、他のJR各社と比較しても好立地と言える。このような立地も活かし、会場からの意見にもあったようにJRバスと連結した周遊観光の可能性も十分ある。

文責:増山 晃太(工房研究員)

【参照リンク】
学習会チラシ(PDF)

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