活動

第114回学習会(平成28年3月23日)

最先端ライフスタイル創造都市 アメリカオレゴン州ポートランド研修視察報告

  今回の学習会は3月11日から16日の期間で米国のオレゴン州ポートランドの視察を行った報告である。視察はまちづくり熊本の丸本氏を団長とし、商店街のビルオーナーや鶴屋などのメンバーと、まちなか工房からは両角氏、冨士川氏、増山が参加した。冨士川氏が体調不良で欠席のため、増山と両角氏がプレゼンを行った。

1.なぜポートランドなのか
 「全米で住みたい町ナンバーワン」と言われ、いま世界中から注目を浴びるのがポートランドである。市域の人口は熊本74万人に対し59万人、都市圏人口は同102万人に対し220万人の都市であり、驚くべきは若い世代を中心に毎週350人の流入人口を数え、ここ10年で17%の人口増を記録していること。

2.変革の30年
オレゴンは1842年から始まるオレゴン・トレイルという開拓民の移動に起源を見る。1970年代には他都市と同様に車社会の波にのまれるが、当時の市長によって1974年の高速道路建設中止・LRT建設着手、1978年の高速道路を撤去して河岸公園の整備、1981年の駐車場ビル建設を中止して都市公園の整備といったように、「人が歩けるまち」を掲げて都市整備を進めてきた。これらの取り組みが公共空間を変え、街並みを変え、ライフスタイルを変え、30年かけて選ばれる都市へと変貌を遂げてきた。

3.PDCとZGFの存在
今回の視察で最も有意義であったことのひとつに、ポートランド市開発局(PDC)の山崎満広氏と建築組織事務所ZGFの渡辺義之氏との交流が挙げられる。PDCは半官半民の組織で、都市計画の立案からインフラ整備、デベロッパーの誘導、交渉、推進、産業振興策や企業支援などを合わせて行う、縦割りではないまちづくり事業体。ZGFは市のアドバイザーとなり建築に関するデザインガイドラインを作成しており、建築だけでなくLRTシステムのデザインも行っている。このように事業者や住民との調整における専門家組織であるPDCとデザインに関する世界的な事務所であるZGFがポートランドのまちづくりとその質を支えている。これらをまとめると、「市民の高いまちへの意識」「市民合意を本気でやる事業者」「持続可能な行政組織」の3点がポートランドの取り組みで継続されてきたことであり、熊本が学ぶべきポイントとして整理された。

 5月にはZGFの渡辺氏とパートナーの都市計画家を熊本に招へいし、講演会を開催する予定である。そちらでも大いに議論していただきたい。

文責:増山 晃太(工房研究員)

【参照リンク】
学習会チラシ(PDF)

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