今回の学習会は9月 30日に開催された金沢大学『学都シンポジウム』に参加した工房スタッフによる報告を行いました。シンポジウムは大正 5 年に建てられた町屋をリノベーションした「金沢学生のまち市民交流館」で行い、金沢、岡山、熊本の大学・行政・学生による意見交換を行ってきました。
1.『学都』金沢の現状
平成 6 年の金沢大学の移転など 9 つの大学が郊外の環状道路沿いにあり、中心市街地から学生が減ったと言われています。また、数万㎡クラスの郊外大型 SCが十数店出店している状況に中心商店街は危機感を持っています。そこで、市では「学生のまち推進条例」を平成 22 年に施行し、学生とまちをつなぐプラットフォームを作り、『学都』再建を図っているようです。
2.学生(大学)・地域・金沢市の関わり
金沢大学では地域創造学類において、学生と地域との接点を作り支援する取り組みを行っています。その成果として、学生自らで運営するカフェの設立や福祉への意識の変化や関わりを持つ団体の設立などいくつかのプロジェクトが生まれ、継続していました。これらの取り組みも、学生だけで進めているのではなく、金沢大学OBが起業した学生と地域とのマッチングを行う「株式会社 ガクトラボ」の存在が大きいように感じました。ガクトラボの社長である仁志出氏のプレゼンでは、自らが学生時代に出会った「地域のカッコイイ大人」の存在やビジネスラウンドテーブルでの「ガムシャラになる経験」から、学生が地域に関わることの楽しさや意義、または難しさを知っているからこそ、様々な支援ができているようでした。市としては、彼らのような存在を「コーディネーター」として位置づけ、学生とまちをつなぐ立場として、それぞれの想いやニ ーズを“ヴィジョン”化させることが事業を立ち上げ、継続する上で重要なことなのだと感じました。金沢の取り組みでは、学生が前面に出ていますが、大学としては彼らのような学生をどのように教育し、成果を評価していくのかが課題のようでした。
3.質疑とワンコイン懇親会
会場からの質疑では、市の「学生のまち推進条例」の目的について、または成果について質問がありました。直接的に学生の金沢での就職が増えるであるとか、定住者が増えるといったことは一概には言えないと思いますが、若者が起業して「コーディネーター」の役割を担っていることは大きな成果であり、熊本でも学ぶべきことではないかという議論がされていました。
文責:増山晃太(工房研究員)
【参照リンク】
学習会チラシ(PDF)