活動

第107回学習会(平成27年6月25日)

『甲斐青萍(かいせいひょう)の絵に見る明治期熊本の町並み
話題提供:伊藤 重剛 氏(熊本大学五高記念館館長/建築学教授)

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 ギリシャ・ローマを中心にした西洋建築史が専門の伊藤重剛先生に,漱石も見ていた明治期の熊本の町並みに関する積年の研究成果を披露していただいた。

 甲斐青萍(かいせいひょう)という明治から昭和に生きた日本画家が江戸、明治、昭和初期の熊本の町並みを詳細に記録している。「熊本城下町並図屏風」、「熊本明治町並図屏風」、「熊本昭和町並図屏風」と伊藤先生に命名された3枚の屏風絵は、資料と記憶とで描き込まれており、正確さにおいて歴史資料としての価値がきわめて高い。それを裏付けるのが伊藤先生の手による道路の重ね図である。これによって例えば「現在の『まるみつパチンコ』から南に入ると追い廻し田畑」であるとか「今の市役所の場所にかつて監獄があり、その横が高等小学校でした」というようにピンポイントの解説が可能になる。それら洛中洛外図屏風のような3枚の屏風絵の他にも、通行人や建物が細かく描写された数十枚のスケッチがある。現市民会館と交通センターの場所に明治期に在った騎兵第六大隊の兵舎と厩のスケッチからは兵士や騎馬が今にも出てきそうであり、通りに描き込まれた臼と竈を運ぶ人の姿は往時の歳末の風物を伝えて余りある。藪の内の学校施設の立地変遷も冨重写真所の古写真と併せて明治から昭和までビビッドにたどることができる。九州パノラマ館、温故堂(上通入口に在ったハンコ屋)、手取小学校(現鶴屋東館の場所:明治11年~昭和4年)等の時代を表す建築物の絵も多数紹介された。
 アーカイブ・ライブラリーとして保存し、何度も繰り返して視聴したい卓話であった。

※学習会終了後のワンコイン懇親会は好評のうちに続いています.
文責:冨士川一裕(工房研究員)

【参照リンク】

学習会チラシ(PDF)

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