活動

第110回学習会(平成27年10月30日)

世界遺産と九州のヘリテージ
話題提供:矢野 和之 氏 (株式会社 文化財保存計画協会 代表取締役)

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 9月は三都市シンポジウムin熊本だったので定例学習会は8月の第109回『公共交通を基軸とした コンパクトなまちづくり』以来である。この間まちなか工房では、三都市シンポのほかにマレーシアからの大学や欧州委員会ライプチッヒからのお客様との交流会などが開かれている。さて本日第110回学習会は、日本イコモス国内委員会事務局長の矢野和之氏をお招きして『世界遺産と九州のヘリテージ』についてお話をうかがった。

●世界遺産の発足
○危機に瀕した文化遺産の保存に個別的緊急的に取組んでいたユネスコが各国と条約を締結して恒久的に取り組むことになり、20 カ国が条約締結した1975 年に発効した
○日本も1992 年に世界遺産条約を批准している(125 番目・・・遅い!)
○2015 年現在、世界163 か国、1,031 件が世界遺産に登録されている
○日本は自然遺産4件、文化遺産は今年登録された「明治日本の産業革命遺産」を含む15 件が登録されている
○世界遺産には、自然遺産、文化遺産、複合遺産の3種があり、最近話題になった「ユネスコ記憶遺産」はユネスコの他部局が所轄する(世界遺産とは別の)文書等の『記録』を目的とする制度である。

●世界遺産の登録手続き
○世界遺産登録の諮問機関であるイコモス(icomos)は1964 ベニス憲章の後発足しており世界遺産より古い
○登録決定はイコモスの答申に基づき「世界遺産委員会」で「登録」「情報紹介」「登録延期」「非登録」が決議される
○世界遺産の登録基準:ⅰ)人類の 創造的傑作 ⅱ)価値観の交流 ⅲ)文化的伝統・文明の伝承 ⅳ)建築様式・建築技術・科学技術の発展段階 ⅴ)伝統的集落・環境とのふれあい ⅵ)出来事・伝統・宗教・芸術的作品・文学的作品との関連(以下は自然遺産)ⅶ)自然景観 ⅷ)地形・地質 ⅸ)生態系 ⅹ)生物多様性
○例えば、法隆寺、厳島神社はⅰ)ⅱ)ⅳ)ⅵ)、姫路城はⅰ)ⅳ)、原爆ドームはⅵ)で申請された。

●世界遺産登録の新たな方向性
○文化的景観、産業遺産、シリアルノミネーション(連携遺産)などの新しい視点
○日本と韓国による「朝鮮通信使の道」、コルビジェの建築と都市計画などは国境を超えた遺産(準備中)
○宗像・沖ノ島(暫定リスト)
○日本初の複合遺産をねらった阿蘇の動き
○日本の文化財をめぐる新たな動きとしては、都市政策局の中に歴史遺産課のある金沢市
○「景観を享受する権利」が認められた鞆の浦景観裁判・・・など
○熊本城は?・・・関ヶ原以前の現存する最古の天守閣の可能性のある宇土櫓は貴重

文責:冨士川一裕(工房研究員)

【参照リンク】
学習会チラシ(PDF)

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