活動

第85回学習会(平成25年4月26日)

町人による熊本城下町の運営:熊本大学永青文庫研究センター 松﨑範子氏

「つながる、ということ」

NHKの大河ドラマ「八重の桜」は、そろそろ戊辰戦争(1868-1869)の段、前半最大のヤマ場を迎える。戊辰戦争では、アメリカの南北戦争で使われ、 その終結(1865年)後に不要になった銃が日本に輸入され、使用された。大河ドラマは、このように(私の)断片的知識(南北戦争、 戊辰戦争があったという年表上に事実のみ)をつないで当時の国際情勢という体系的な知にしてくれる演出があり、好きだ(綾瀬はるかも八重役はなかなかよい)。
4月の学習会は、熊本大学永青文庫研究センターの松﨑範子氏による「町人による熊本城下町の運営」に関する講話。・・・島原天草の乱の後、 鎖国が徹底されると大阪などの大商人は外国貿易ができなくなり、保有する海運力を国内流通に振り向けた。その結果、肥後熊本の商業は、 諸藩から流入してくる商品と商人に押され衰退していった。そうした中で有力商人たちは、自らと町を守るため町の経営に深くかかわっていくようになる。 ・・・松崎氏のそんな説明を聞いて、鎖国と近世の地域経済、住民自治を結びつけて考えられるようになった。大河ドラマと同じ喜び。
さて、江戸期を通し、1800年代初頭にかけて完成した熊本城下町の運営システムは、(私が)今の組織でイメージするなら、町内会- 自治会長(当時は“丁”-丁頭)、校区自治協議会-会長(懸(かかり)-別当)、自治協連絡協議会-連合会長(熊本町-惣月行事) のような階層的な機構をもっていたようだ。その中心的役割を有力商人が果たしていた。現在の住民基本台帳や土地家屋台帳のようなものも別当 (べっとう)が作成・管理し、税金(今の自治会費か)も徴収した。町民には、農民と違い、藩から年貢のような課税は無かった。その代わり、 現代の市役所の税務課の職員、消防署員の人件費、交通・物流センターの運営費、お祭りの費用、窮民の実態調査や救済費用 (年末に衣服を支給するなど)に至るまで全て町民が負担していたらしい。ところで、このような資料は全て永青文庫にあるのだと思っていたが、 藩はそのような台帳類は作らなかったので、永青文庫にはもとものそのようなものがないそうだ。町人側の記録は町人の下にあったが、 戦災や水害等で失われたそうだ。GISデータの分析などを通して城下町を見てきた私(まちなか工房)だが、今回、古文書の中の町とつながることができ、 研究のベースが一つ広がった気がする。
松﨑氏の研究成果は、「近世城下町の運営と町人」清文堂(本体9,200円)に詳しい。

文責:前田(工房研究員20130426)

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