2、熱上昇風(サーマル)の特徴
実際にサーマルとはどのようなものかというと、単に上昇しているだけでなく上昇の中にもその中心にはコアといってさらに強い箇所があり上昇の外側には下降気流が発生する。一般に上昇風とは雲を形成するとおもわれるかもしれないが、以下にあるような(1)〜(4)の条件によって雲が形成されるときと、ないときがある。さらにこの世に全く同じサーマルと言うのは存在しない、なぜなら
(1) 地形
(2) その日の最低気温と最高気温の差
(3) 上空の気温と地上付近の気温差
(4) 風向き
(5) 雲

などの条件によって季節、月日、時間で絶えずその形状、大きさ、強さが異なってくるためである。またサーマルは泡のようにちぎれたバブルサーマルと柱のように空高くまで続くコラムサーマルに分けられる、強風時などはバブルサーマルになりやすい。さらに大きいサーマルは小さいサーマルを吸い寄せるといった性質があり、上空に行くほど次第に広範囲の上昇風帯となり雲を形成する。しかし、一般的にその強さは高度が高くなるほど弱くなってくる((4)より)。

(1)地形
上昇気流が発生するためのきっかけを作るポイント、サーマルは地表のどの部分からも発生しているわけではなく、傾斜のある山や、森の中にポツンとある赤茶けた畑、畑の中にあるビニルハウス、またはアスファルトなどの熱が集中しやすくなる場所からよく発生する、例えばビル街などからもサーマルが出ていると考えられる、この場所のことをトリガーポイントと称する。このトリガーポイントの大きさや種類、日射条件によってもサーマルの形状、大きさ、強さが変化してくる。例えば単純に一日中日が射している山などの急な斜面が工事などでコンクリートなどででできているのならば、必ずそこにはサーマルが発生する。しかしトリガーポイントに必ずサーマルがあるというわけでなく、(2)〜(4)の要因によってランダムに変化する。あくまでトリガーポイントとはサーマル発生点の参考にすべきだ

(2)その日の最低気温と最高気温の差
 基本的に最低気温は日の出前で、最高気温は午後2時ぐらいとなる、この温度差が大きいほど、より強くて大きいサーマルが発生する。しかし、温度差があるからといってサーマルが発生するわけではない。それは曇りの日でもそれなりの温度に差が生じるからである、しかしここで言う温度というのはあくまで地表1m付近での気温の事をいっており、地べた、アスファルト、コンクリートなどそのものの、温度ではないからである。直射による太陽エネルギーの蓄えがないとサーマルの活動は比較的弱くなり、例え温度差があってもサーマルができないことがある。

(3)上空の気温と地上付近の気温差
 よく天気予報などで「日本の上空に冷たい寒気が入ってくるでしょう」とあるが これは上空の空気の気温が低いと、地表付近の空気との間に温度差がでできてサーマル活動は活発となる。

(4)風向き
 風は一日中一定方向の向きではなく、日中は海から陸にむかって吹いてくる海風と、夜は陸から海にむかって吹く山風とがある。等圧線の配置、内陸の地点等により実際の風向きはさまざまに変化する。内陸部では海風が届くのが遅く、日中に風の衝突が起こり、風と風がぶつかる領域であるシアーラインができる。そのシアーラインでは風が上下に噴出しており、たいへん大気が不安定になり時には雲なども形成する。

(5)雲
 小学校の理科の授業でも習った事があるように、上昇風は露天温度を超える空域に達すると空気に含まれる水蒸気が凝結して雲を形成する。露天温度はその日の気象条件(2)・(3)によって変化する。また空気が乾燥している時はサーマルはあっても雲が形成されないときがある。さらに一般的に気温減率は約0.6度といわれているが、実際には乾いた空気の場合は、温度の変化する割合は100mの上昇、下降に伴って約1度である。これを乾燥断熱減率というが、空気が湿っていて気塊が断熱冷却した場合、水蒸気の凝結がおこるならば凝結量に比例する潜熱が放出されるので、この場合の減率は1度よりも低くなり、約0.5度(温帯地方)になる。これを湿潤断熱減率という。サーマルによって発生する雲の種類は積雲と呼ばれる、これが非常に激しくなると積乱雲となって、夕立などの非常に激しい雨をもたらすことになる。また積乱雲はその成長から衰退期までの速度が速く、空が黒くなってくるとすぐに大粒の雨が降ってくる。



















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