街中のユニバーサルデザイン
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　環境システム工学科３年　藤本　洋
１．まえがき
私たちの街には様々な構造物がありそれを利用して私たちは生活している。しかし、私たちが快適に生活している空間のなかでも車椅子利用者、視覚障害者、及び高齢者にとって快適なものだとは言えない。車椅子利用者にとっては上下移動の際に階段のみしかない場合は、ほぼ自力では不可能と思われ、移動の際もより広い幅を要する。視覚障害者にとっては誘導ブロックのない箇所は移動が困難で、高齢者にとっては階段の勾配が急すぎるなど、現在存在する構造物は健康な若年層のみを対象にしたものがあまりにも多い。来る高齢化社会にそなえ、また、福祉社会を目指すためにはユニバーサルデザインを導入した構造物を造る必要がある。
２．調査内容
　私たちは全国の数々のユニバーサルデザインの事例をもとに現在熊本市内にある公共の建物とその周辺をユニバーサルデザインの観点から問題となる点を調査した。特に上熊本駅、熊本交通センター、そして市電水前寺駅通に関して詳しく調査してみた。
① 上熊本駅周辺
　　　熊本電鉄、JR、市電、バスの交通結節点でありながらそれらがバラバラに存在し、乗り換えは便利とは言えない。電鉄のホームは階段があり障害者にとっては移動しにくい。また、健常者にとっても雨天時は傘が必要である。市電に関しても、乗り換えるための移動距離が70m以上ある。
② 熊本交通センター
　　　熊本県内外各方面行のバスが集まる熊本県の公共交通の中心である。しかし、地下街からバス乗り場へ行く際の案内がわかりにくく、各ホーム間の移動が一階ではできず地下か2階を利用するが、アクセスが悪く利用しにくい。階段も狭く、場所によっては人がすれ違うのがやっとという箇所もある。
③ 市電水前寺駅通付近
　　　JR新水前寺駅近くにあり、市電とJR豊肥線の重要な結節点だが、市電水前寺駅通の電停に行くには歩道橋か横断歩道を利用することになるが、歩道橋の登り口は新水前寺駅とは逆を向いており、また横断歩道も信号がありスムーズには移動できない。また、新水前寺駅も電停とは線路を挟んで逆に位置し乗り換えの際の移動距離が非常に長い。歩道は違法駐輪の自転ﾔが多く歩道を大幅に狭くしている。
３．ユニバーサルデザイン
　以上の3ヶ所において問題点を改善したユニバーサルデザインを考えてみた。
① 上熊本駅
・各交通機関を乗り継ぐ時の障害となっている移動距離、高低差をなくすために市電電停、電鉄の駅を現在の上熊本駅駅ﾉ内に移す。
・同じ建物の中にホームがあるので，降雨時も乗り換えも傘をささなくてもよい。
② 熊本交通センター
・各階段をエスカレーターに変え、エレベーターを併設する。
・二階部分は各方面行きのバス乗り場へ移動しやすいように全面に設置する。
・二階部分にバスの時刻表、及びバスの到着を知らせる電光掲示、音声による案内を行う。
・二階には広い休憩所、待合所を設置する。
・見やすい案内板に変える。（文字が大きく目立つもの）
・二階には採光用の天窓を開け、一階バス乗り場を暗くしないようにする。
③ 市電水前寺駅通周辺
・広い歩道橋を造り空間の有効利用を図る。
・駅は歩道橋上に移動し移動距離を短縮する。
・歩道橋上に駐輪場を造り違法駐輪をなくす。
・歩道橋登り口は車椅子、自転車も上がれるスロープをつける。
・高低差のある各店舗の二階と歩道橋との間をスロープにより連結する。
・市電乗り場の登り口にエレベーターを併設する。
４．感想
　私たちが普段何気なく利用している熊本市内の様々な公共施設等において調査してみたが、車椅子利用者、視覚障害者、高齢者の方々にとっては移動するのが困難と思われる場所が予想以上に多かった。今までのデザインは若くて健康な人を対象にしており、それ以外の部分はコストがかかるため省かれてきた。しかし、21世紀のデザインは、ひとりひとりの使いやすさ、ひとりひとりにやさしいことを目的にすべきであり、すべてを対象領域にした普遍的なデザインであるユニバーサルデザインを取り入れた街づくりが必要であると思う。

　以下にユニバーサルデザインの説明と提案する熊本の交通結節点のユニバーサルデザインの例を示す。