活動

第96回学習会(平成26年4月24日)

第五期歌舞伎座に見る伝統技術と最新技術の融合
話題提供:水田 保雄 氏(清水建設株式会社 現場力強化推進室 室長補佐・上席エンジニア ,
             元 歌舞伎座計画建設所、建設所長)

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 4月の学習会は、熊本大学OB(昭和48年建築学科卒)で歌舞伎座建替え工事の現場監督だった清水建設の水田保雄氏に『第5期歌舞伎座に見る伝統技術と最新技術の融合』という演題でモノづくりの現場から報告いただいた。

1.今回建替えの位置づけ
 明治・大正期の第1期、第2期、昭和初期から戦前までの第3期歌舞伎座に続き昭和25年に竣工した第4期歌舞伎座(平成14年には「登録有形文化財」に登録)の外観を再現し、世界に誇る歌舞伎の殿堂として機能更新を図ることが第5期歌舞伎座工事に課せられたミッションであった。超高層事務所棟(歌舞伎座タワー)を歌舞伎座の上部に建設し、不動産経営を可能にするというもう一つの目的もあった。

2.工事概要
 グランドレベルから地下30mと地上140mへ同時に工事を進める「逆打(さかう)ち工法」。工事期間2010年10月01日~2013年2月28日の29ヶ月。

4.建築というモノづくり 7つのこだわり
 ①メガトラスという構造設計(低層部の歌舞伎座内無柱を可能にした) ②超高層基準階1層を6日間で建設する驚異のスマートファクトリー ③第4期歌舞伎座のデザイン再現 ④部材の再利用と新技術の採用 ⑤舞台用の百年檜 ⑥直径18m、ピット深さ16m、日本一の回り舞台 ⑦歌舞伎座の音環境の継承

6.職人技の集積で日本の伝統建築を創り上げた
 3・11東日本大震災の揺れの中でも工事を中断しなかった工事屋魂、日本古来の木造ディテールをGRC(ガラス繊維コンクリート)やアルミ等の新しい素材を使って再現するモノづくりへのこだわり、漆が(基準法上)使えないために通常塗料で漆同等の質感を出す塗りの技、10万枚の瓦を一枚一枚はずして新しい瓦に葺き替えた真摯な仕事振り、歌舞伎の命である厚さ36mmの舞台床やコロセニアムの額縁、停電でも人力で回せる回り舞台へのこだわり・・・一つ一つの職人技が歌舞伎座という日本の伝統建築を創り上げた。

 そしてこのような創造性あふれる建設工事の現場に近年女性の進出が目覚しく、行く先々で必ず女性の現場監督や担当者を眼にする。女性向けに労働環境も整えられており、業界は女子卒業生を歓迎している、という呼びかけで話を結ばれた。

文責:冨士川一裕(工房研究員)

【参照リンク】

学習会チラシ(PDF)

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