活動

第80回学習会(平成24年10月25日)

白川整備のこれまでとこれから:
国道交通省熊本河川国道事務所調査第一課長 中元道夫氏、熊本大学大学院自然科学研究科 星野裕司准教授

「デザインの力」 

工房まちづくり学習会も回を重ね、10月の定例会で第80回を数えた。継続は力なり。
今回は、『白川整備のこれまでとこれから』をテーマに、中元道男氏(国土交通省熊本河川国道事務所調査第一課長)と星野裕司氏(熊本大学大学院自然科学研究科准教授)の報告。
熊本市中心部を流れる白川にかかる大甲(たいこう)橋から上流を眺めると、緑豊かな両岸が明午(めいご)橋の先で川が右方向に大きく曲がり込み、 水面が緑で覆われたようになり、ちょうどその向こうに立田(たつた)山の緑の屏風が立つ風景を見ることができる。 これほど緑視率の高い都市の中の川は、そうないだろう。「森の都」熊本の自慢の景観だ。
7月12日の(7.12)九州北部豪雨では、この上流部で、昭和28年の6.26水害に次ぐ大きな被害が発生した。 中元課長からは、被害の状況とこれまでの白川整備の概要や経緯について詳しく報告があった。昭和40年頃には、まだ白川の堤防敷きに民家が残っていたそうで 、それが60年頃までかけてやっと安全な場所に移ったという。そのように様々な防災対策が進められてきたが、白川には「景観か命か」という二者択一の論点がずっとあった(あえて話を単純化すると)。 上記の河岸の緑を棄て堤防を建設するか、緑を残すか(6.26を忘れたのか!)という議論である。
現在はどうなっているかと言うと、実は、河岸の大木を一部(適度に)間引きし、かつ、川幅を広げるべく残った木を立ち曳きによって移植するなどして堤防建設スペースを確保し、 同時にセンス良くデザインされた親しみのある遊歩道の整備が進められている。どうやら景観も命も両立できそうだ。この詳しい経緯や設計の考え方について星野准教授から報告があった。
なんで当時からこんな話にならなかったのだろう?防災のみならず環境やアメニティとの調和をもたらしたのは何だろう?それはきっと「デザインの力」だ。 「防災」オンリーではなく「デサイン」という概念を入れたことで、二者択一問題をよりよい解決に導いたのだ。・・・・デザインの力で社会の課題を解決するという点に、皆がもっと関心を持つべきだと思う。 

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