5月の学習会は、株式会社広告製版社代表取締役の伊東勝氏(39)に自社ビルであるSHIBAURA HOUSEについて建設の背景や運営について、お話をうかがった。テーマは、『会社を地域の家に変える試み』。
1.ビル建設の背景
社長を引き継ぐことになった製版会社は、バブル崩壊以降売上激減。製版技術の激変もあってリストラと縮小均衡を余儀なくされた。100人ほどいた従業員は20数名となり会社の存続を考える時期に社長を引き継いだ。社員とも話し合い、老朽化した社屋を社員と地域の人たちが同居するような社屋に建て替えることになった。
設計事務所のスタッフとドイツ、スイスを中心に美術館、デザイン学校、大学等を1月ほどかけて見て巡り「上から下までつながっている建物がイイ」という結論に達した。
2.新社屋の概要
場 所:JR田町駅芝浦口より徒歩7分
建物の概要:平面は一辺14mのほぼ正方形/中2階と中5階のある5階建/4階と(5階の間の)中5階のみ自社 オフィスであとはオープンスペース/1階:リビング、2・3階:ラウンジ、5階:バードルーム (ホール)
設 計:SANAA妹島和世事務所/施工:清水建設/竣工2011年7月
3.運営(キーワード)
①フリースペースのインパクト
誰でも自由に入れる空間とレンタル空間が同居。非営利イベントのレンタル料金は格安に設定。
(2011年度:レンタル200件、イベント120件。売上26百万円の80%がスペースレンタル)
②企画:周囲との関係性を活かす
例えば、近くのおばあちゃんに教わった編み物を使って作品を作るアーティスト
③企画:「自分」から考える
例えば、自分が「これは良い」と思ったことをイベントを通して周囲にもシェアする
④企画:「芝浦」に閉じない
海外から呼んだクリエーターに教わった学生が海外で発表
③フレンドシップで仲間を集める
オランダ大使館はサポーターでありよき理解者
④スタッフが魅力的な空間を創る
※発意は・・・文化・教育に理解のない街や行政に対する違和感。会社や民間施設をもっと地域に開けないかという思い。法人ビルのエントランスロビーなどはもっと開放できる。
※最近思うこと・・・白紙からでなく古さや歴史、物語りと連携しながらデザインすれば強さにつながる。
文責:冨士川一裕(工房研究員)
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