木橋をつくろう
昔は木橋・今こそ木橋
木の文化とも称えられる我が国にはかつて多くの木橋が存在した。 しかし、それらは強度や耐久性等の諸問題を解決する術もなく、姿を消していった。 近年の木橋復活はこのようなかつての諸問題を新しい技術により克服した結果とも言える。 これらの木橋には従来の木橋の常識を覆すような新しい木橋の姿がある。
今木橋は新たな時代、近代木橋の時代を迎えたのである。




かつての常識:木橋は腐るので10年でダメになる
木材防腐技術の進歩で長期供用OK

木材は腐るのが常識、そしてこれは木橋を管理する上で非常に厄介な問題であった。これに対して近年では防腐効果の高い薬剤が開発され、またこれを組織内部に加圧注入する方法が取られるようになり、耐久性が飛躍的に向上した。また最近では使用される薬剤も、周辺環境に影響を与えず消却しても有害物質が出ないなど環境負荷が小さいものが主流となっている。



かつての常識:木は弱いので橋の材料には適さない
超高強度木材の登場

南洋材といわれる熱帯の樹木には考えられないような強度を持つ木材が存在する。その代表格がボンゴシ (Bongossi)。西アフリカ産の広葉樹で、樹高は45〜50m、幹の直径1.5mの大木である。その特徴は…

@高強度
国産材の代表スギと比較しても2〜3倍も強く、コンクリートなみの強度を持つ。巨大構造物に適しており、欧州では屋外構造物として広く用いられている。

A硬い
非常に硬い、加工に困るほどに硬く、大工が自分の工具を使いたがらないそうである。
擦り減ったり削れたりということがほとんどないという点で橋の材料に好都合。

B腐りにくい
一般的に広葉樹材は腐りにくいが特にンゴシは組織が緻密であるため腐りにくいといわれている。

C重い
もちろん木としては…ということ。比重は1.06で水に沈む不思議な木であるが、それでもコンクリートや鋼材等他の建設材料りははるかに軽い。つまり、軽くて丈夫な橋をつくることができる。


三日月橋(大分県大分市)




かつての常識:木橋は断面が小さいので大きな橋は無理
集成加工技術で大断面も自在

かつての木橋には製材や丸太が用いられていた。しかし、原木を挽いたり削ったりして作られる製材・丸太では断面の大きさには限界があり、自ずと橋の規模や支えられる荷重にも限界があった。かつての橋は長い橋であっても橋脚が多数用いられており、いわば小さい橋の組み合わせであった。

上津屋橋(木津川の流れ橋) 京都府八幡市


そこで登場するのが、左のような集成材。最近目にする機会も多い。これは丸太を一旦板に挽き、それらを再び接着したものである。その際節や割れなどの欠点を除去し、板を適正に配置するので、強度は一般に製材の5割アップとなる。


小部材を組み合わせて作るので大断面や変断面も自由に作れる。ここでは間伐材も立派な資源である。そして、板を曲げながら接着すると右のような湾曲集成材も自在に作ることができる。




高森東小学校体育館(熊本県高森町)
集成材は大規模木造建築ブームの立役者でもある。火事が心配と思われるかもしれないが、大断面部材は燃焼しても表面の炭化層により酸素の供給が遮断されるため1000℃の下でも容易に燃え落ちないことが証明されている。むしろコンクリート等より防火性に優れているのである。


集成材のみならず木構造では、非常に軽いことも利点ひとつに挙げられる。スギの強度はコンクリートや鋼材の強度にははるかに劣るものの、それ以上に軽いのことから、同一強度を得るための構造物も当然軽くなる。
各構造材料の比較


同等構造物における重さの比較

そして今、この集成材を用いた巨大な木橋が作られるようになっている。

杉の木橋(宮崎県小林市)



かつての常識:橋は実用性が一番
公共構造物にもアメニティ性を

量的に豊かになった現代は、質的な豊かさが求められる時代でもある。公共構造物に関しても同様で、実用性に加えてアメニティ性が求められるようになってきた。木材は、自然のぬくもりを持ち、また人に優しく周囲の環境とも調和しやすいという天然材料としての特性を有していることから、橋に限らず公共構造物に広く取り入れられるようになってきている。